パチ、パチ……
かすかに、火のはぜる音が聞こえた。
野焼きの季節ではないし、こんな暖かな日に焚き火とも考えづらい。
鼻をかすめる、焦げたにおいに誘われて裏庭を覗くと、
そこには小さな焚き火を見下ろす執事の姿があった。
声をかけようとしたが、その必要はなかった。
執事は、ゆっくりと顔を上げ、こちらをまっすぐに見つめた。
そして、彼が時折そうするように、今もまた僅かに目を細め、微笑む。
気になったのは、その仕草があまりにも様式的に見えたからだ。
私はそれから、彼が女中に火の始末を命じて、こちらに歩み寄るまで、
まるで立ち竦んだように、その場に留まっていた。
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