冷たい布が首筋に押し当てられて、徐々に意識を取り戻す。
ぼんやりとした視界の端々に、オーブのような光がちらちらとした。
薄く開けた瞳を、閉じるだけの力もなく、乾いて痛みを感じるころ、
優しい手のひらがまぶたをそっと下ろしてくれた。
死者にそうするような、ゆっくりとした動作は、
不思議と私の心を落ち着けた。
「もう少しお眠りなさい。お疲れでしょう」
耳元に口を寄せて、低く囁く。
彼の言うとおりにしようと試みたが、反して頭脳は覚醒を始めていた。
まばたきをするだけの力もないのに、意識だけがはっきりとしてくる。
また、倒れたのか、あるいは、昨夜から目覚めなかったのか、
それは判然としなかったが、いつもと同じ症状であるらしい。
「近くに居ります」
その言葉は、「例えこのまま目覚めなかったとしても」と続く気がした。
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