2011年5月25日水曜日

このブログについて。

いまさらですが、このブログについてです。

このブログは、たったんが書いている脳内執事の妄想ブログです。

ここに掲載の文章などはたったんに著作権があり、放棄はしません。

しかし、私の創作物の表現するものや断片が、
第三者によってより良く展開され、公開されることを歓迎します。

悪意のある全てのその方法がとられたとき、私は悲しく思うかもしれません。
しかし、その方法がもし善意に因っていたとしても、
また大変悲しいことですが、悪意に因っていたとしても、私はその一切に関知しません。

これは、私の創作物が完全なゼロから創られたものではなく、
誰かの創作物に何らかの影響を受けて創られたものだからです。


なんとなく書いとくもんなのかなと思って書いただけです。すみません。

彼が何を燃したのか訊ねることはついになかった。

パチ、パチ……

かすかに、火のはぜる音が聞こえた。
野焼きの季節ではないし、こんな暖かな日に焚き火とも考えづらい。
鼻をかすめる、焦げたにおいに誘われて裏庭を覗くと、
そこには小さな焚き火を見下ろす執事の姿があった。

声をかけようとしたが、その必要はなかった。

執事は、ゆっくりと顔を上げ、こちらをまっすぐに見つめた。
そして、彼が時折そうするように、今もまた僅かに目を細め、微笑む。
気になったのは、その仕草があまりにも様式的に見えたからだ。

私はそれから、彼が女中に火の始末を命じて、こちらに歩み寄るまで、
まるで立ち竦んだように、その場に留まっていた。

2011年5月21日土曜日

熱病。

冷たい布が首筋に押し当てられて、徐々に意識を取り戻す。
ぼんやりとした視界の端々に、オーブのような光がちらちらとした。
薄く開けた瞳を、閉じるだけの力もなく、乾いて痛みを感じるころ、
優しい手のひらがまぶたをそっと下ろしてくれた。

死者にそうするような、ゆっくりとした動作は、
不思議と私の心を落ち着けた。

「もう少しお眠りなさい。お疲れでしょう」

耳元に口を寄せて、低く囁く。
彼の言うとおりにしようと試みたが、反して頭脳は覚醒を始めていた。
まばたきをするだけの力もないのに、意識だけがはっきりとしてくる。

また、倒れたのか、あるいは、昨夜から目覚めなかったのか、
それは判然としなかったが、いつもと同じ症状であるらしい。

「近くに居ります」

その言葉は、「例えこのまま目覚めなかったとしても」と続く気がした。

2011年5月20日金曜日

ティー・タイムに。

左手の薬指につけている、プラチナのリングが気になった。
それはずっと昔からそこにあって、執事の指とよく馴染んで沈んだ色合いをしている。
いつでも当たり前に傍にいたこの男の、私生活を自分はほとんど知らない。

結婚をしているのか、と訊ねると、彼は紅茶を淹れる手を止めて顔を上げた。
訊いてはいけない問いを口に出してしまった気がして、
別に答えなくてもいい、と言うと、彼は柔らかく微笑んだ。

「あなたに訊かれたことを答えないわけにはいきませんし、
さほど不幸な話でもありません」

言いながら差し出すカップからは、湯気とともにダージリンの香りが立ち上った。
穏やかな午後だった。

彼がはじめの質問に答える前に、それではなぜ今まで話さなかったのか、と問う。
期せずして、なぜ今まで素性を明かさなかったのか、という口ぶりになってしまい、
ごまかすように紅茶を口に含むと、それは慰めるような優しさで喉を落ちていった。
ふんわりと鼻の奥を抜ける気高い香りが、心を落ち着ける。

その様子を高い位置から見守っていた長身の従者は、
陽光を浴びて紅茶のようにきらめく髪を風に揺らしながら、
ブルーベリー・タルトを載せた皿をこちらにすすめ、

「あなたが訊かないことを、話すわけにはいきません」

そう言って、いたずらを仕掛けた少年のような瞳を眼鏡の向こうで輝かせた。